辻村深月『島はぼくらと』
📕2002.10.10
夢中で読みました。
とてもとても面白かった。
瀬戸内海の小さな島・冴島
人口3000人弱の島には高校がない。
島の子どもは中学を卒業するとフェリーで本土の高校に通うことになる。
朱里と衣花、源樹、新の4人はともに冴島で育った同学年で、高校2年生。
帰りの最終便に乗るため部活には入れず
フェリーが欠航になれば学校に行けない
そんな4人の高校生を中心とした "限られた島" で暮らす人たちと島にやって来る人たちの、出会いと別れの物語。
島の子はいつか本土に渡る
高校を卒業すればそれぞれの道へ
友達も、それぞれの家族とも
一緒にいられる時間は限られている
4人の友情、親や家族との関係、
Iターン移住者との交流、進路の悩み。
登場人物一人ひとりの感情や葛藤が丁寧に描かれ、
エピソードを重ねるたびにどんどん引き込まれていきます。
引き込まれすぎて、実際に "島にいる" ような感覚になりました。
Iターンの島であると同時にシングルマザーの島でもある。さまざまな事情を抱えた者たちが島にはやって来る。
キーとなる人物が谷川ヨシノ。
すべてのエピソードに彼女が絡む。
彼女は国土交通省からの紹介で村長に雇われた
『地域活性デザイナー』
自分たちの仕事は人と人とを繋ぐ仕事なのだ。
島の住民と外部からの移住者を繋ぎ、島に住む人たちの居場所を作る。故郷でもない場所のために若さまで犠牲にするヨシノは何のために働くのか。
「──私が『さえじま』を作ったのはね、島のおばちゃんたちに、居場所を作りたかったからなんだ」
島に自分の仕事があるということは、そこが自分たちの居場所になり、島に残る理由になる。居場所があるというのはそれぐらい尊いことなのだ。
なんて魅力的な人物なんだろう
と思ったらこの小説は、実際のコミュニティーデザイナーさんとの出会いから始まったものだったのですね。
わたしも地方出身であり、
離島にも、ある期間住んでいたことがあって
地方に住むということ、故郷を離れること
外からやって来ること、それを受け入れること
それぞれの感情がわかる気がして
とても心が震える物語でした。
手元に置いておきたい小説
図書館本だったのですが
すぐに買いに走りました。