onoshin blog

メンタルにまつわる自己理解について

「自由にはたらく」を知った、夏。

27歳の頃、離島のリゾートホテルで半年ほど働いていたことがあります。

そこで初めて「自由にはたらくこと」を知った、という話です。

ふつうの会社員だった私は、会社を辞めて転職までのつなぎの期間として、半分旅行気分で離島に飛びました。いわゆるリゾートバイトです。

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愉快な仲間たち

小さな空港に到着すると、生暖かい風、青い空、海、フェニックスロベ(ヤシの木)が並ぶ大通り。まさに南国リゾート!

非日常の世界へやって来ました。

同じように考える人はいるもので、同年代の若者たちが次から次へとやって来るわけです。その時期は15人ほどいて、男女比は6:4くらいだったと思います。

島を案内してもらったり、サプライズで誕生会を開いてくれたり。ちょっとノリに戸惑いつつも、すぐに仲間になりました。

住み込みの長期バイトで、みんなで同じ寮に寝泊まりしながら働くわけです。なんだか楽しそうですよね。

都会とのギャップで非日常感もあって、お金を稼ぎながら長期の旅行に来ているようなもの。

これは楽しくなりそうだ。

と思っていました……

 

自由にはたらく!

仕事内容はレストランでのサービス(配膳)でした。ちなみに飲食業の経験はありません。

まぁなんとかなるか、と軽く考えていました。

 

1日の流れは、

朝6時から宿泊客の朝食準備。

10時から16時まで中抜けでフリー。

また16時から20時まで夕食対応。

忙しさはお客様の人数によるという感じです。

 

昼の中抜け時間はカフェでゆっくりしたり、海に出掛けて釣りをしたり。

朝の仕事前にサーフィンをして、昼にサーフィンしてまた仕事する、というハードスケジュールをなんなくこなす強者も。

夜は焚き火を囲んでお酒を飲んだり、浜辺で花火をしたり。満天の星を見ながら語らったり。

 

自由にはたらくとはこういうこと!

好きなことを好きなだけやって、お金も稼げて、

自由ってサイコー!

 

 

……と思いますよね。

いやいや、これはまだ6月初めの話し。

 

ここから地獄の繁忙期が待っていました。

 

2ヶ月でただの日常

この時期はみんな必死です。

表では笑顔で接客し、裏では汗だくで走り回って、とにかく毎日忙しい!

仕事が終わってぐったりして帰り、また早朝から仕事……みんなイライラしているので人間関係もギスギスしてきます。

さらに、繁忙期は月に1日も休みがありません。

リゾートで働く現実を見せられた気分に……

旅行に来ているのではなく生活をしているんだと思い知らされました。

 

正直つらい!もう帰りたい!

と思いましたよ。

 

刺激的だった非日常も、慣れるとただの日常になります。

田舎暮らしに憧れるのは良いけれど、そこに住んでいる人にとっては普通の日常です。

2泊3日の旅行ではなく、そこに住んで働くということは、2か月も経てば自由も何もただの日常になるのだなと痛感しました。

 

「非日常」だからこそ刺激的で楽しいもの。

旅行気分なんて、完全に考えが甘かったです。

 

仕事を任される

そんなある日のこと。

ここからが「自由にはたらく」の話です。

 

夏になると、ホテル内のレストランやお座敷に加えて、屋外のガーデンテラスでバーベキューが出来るプランが始まります。(私たちはさらにキツくなります)

私はそのガーデンテラスの仕切りを任されたのです。

「ガーデンはお前に任せる」

そう言われました。

丸投げと言ってもいいでしょう。

 

「ど、どうすればいいんですか⁉︎」

「テーブルとパラソルはあるから」

「炭とか網とかは⁉︎」

「必要なものは買っていいから」

「えぇ⁉︎そこからやるんですか?」

「任せるから自由にやってみろ」

「いつオープンですか?」

「2週間後だ」

「えぇ⁉︎」

 

と、こんな感じで自由を与えられたわけです。

 

もちろん、飲食業も未経験、リーダーにもなったことがない。

どうすればいいんだよ!

と思いました。

 

湧いてくる責任感

ただ、仕事を全面的に任されるというのは初めての経験です。

人は役割を与えられると責任感が湧いてくるものですね。やるしかないじゃん、という感じでモチベーションは上がっていました。

何からやろうか……と考えて、

まずは1年間ほったらかしで物置きと化したパントリーの掃除を始めたのでした。とりあえずキッチン周りを使えるようにしないといけません。

朝の仕事が終わって、中抜けの時間に独りでせっせと掃除。いつ何をやるかも自由ですからね。

もちろん1日では終わらず、次の日も作業です。

暑いし疲れるし、汗だくになりながらの作業ですが、不思議とこんな気持ちでした。

 

「なんか楽しい」

 

目的を達成するために、いつ何をどうやっていつまでにやるか、すべて自分の裁量で決めていい。

プレッシャーと同時に楽しさを感じ始めていました。

 

そうして独りでやる気になっていると、誰かが必ず見ているんですね。

1人、2人と手伝いに来てくれるようになり、わからないことは素直に聞けば、みんなが協力してくれました。

おかげでなんとかオープンまでに形にすることができ、ひと安心です。

 

はたらく目的

お客様が入り出すと今までどおり鬼のように忙しいのですが、そのときの私はこう思っていました。

 

「もっと楽しんでもらうにはどうすれば良いだろう」

 

自分のことよりも、お客様のことを考えるようになっていたのです。もっと良いサービスをしたいとアイデアを練ったり、イイ感じの曲をかけたいと曲を選んだり。

お客様に満足してもらうことが目的で、そのための手段を自由に考えること。それがとても楽しかったのを憶えています。

「あの時かかっていた曲はなんていう曲ですか?」と問い合わせが来たのは嬉しかったですね。

 

自由にはたらく

自由(フリー)にはたらくというのは、

何をしてもいいように見えて、実は責任が大きくなっている。「やるべきこと(目的)がより明確になっている状態」ではないかと思うのです。

 

あの夏、あの場所でそのことを知った

という話です。

 

 

#フリーにはたらく